選択的夫婦別姓でまだ消耗しているの?最高裁判決をうけ配偶者から「籍を外して事実婚にしたい」

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選択的夫婦別姓を認めない夫婦同氏を定めている民法の規定は「合憲」との最高裁判決。夫婦の姓について司法判断が出されたのは初めてのこと。違憲判決とその後の選択的夫婦別姓法制化へのプロセスを望んでいた方々には誠に残念な結果となりました。

「女性で口惜しい思いをしている方は多いはずだよ」と言ってくれた友人(男性)もいましたが、他方で、こんな反応が起こっているのも目にしました。

配偶者が「籍を外して事実婚にしたい」

そして、FBでこの「知人」の男性が名乗り出て、このツイートを自ら拡散。

「知人」って私のことです。今年銀婚式ですが、結婚式のスピーチで、かみさんは夫婦同姓が許せないと怒りをぶちまけてました。

そこへ配偶者の職場の同僚とみられる女性が登場し

「姓」だけの問題でなく、積年の夫婦関係の不平等感が「かみさん」にはあるのでは? 少なくとも、彼女は私にはそれをぶちまけています。例えば、

と、心温まるコメントを開始。

彼女より早く帰宅している夫が、ゴロンと横になってテレビで野球を見ていて、疲れて帰った彼女が急いで夕食を作るとか、洗濯物は夫はたたまないとか…。あと旅行に行きたいのに、夫は極度のインドア派で、これまで家族旅行や夫婦旅行に行ったこともないとか…。とにかく「あの人と老後を過ごすと思うと…」と暗然たる表情です。

これ以上ないくらいの配偶者からの厳しい指摘を紹介(笑)。なんでも率直に言い合える職場仲間で、家族ぐるみのお付き合いの深さも想像できました。

わたしもこの男性とおなじく結婚20年目。相方の姓で入籍して12年通称別姓で過ごし、その後籍を抜いて事実婚8年間を過ごした男性として語ってみますよww

選択的夫婦別姓とは?旧姓のままで法律上の夫婦になれる制度

まず簡単に選択的夫婦別姓について確認です。

現在の民法の「婚姻」規定では、婚姻をすると夫または妻の姓をどちらか1つを名乗るものとされています。どちらかに決めないと法律上の夫婦にはなれない、ということです。

民法第750条

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

そして、その後離婚をしたり、相方が亡くなったりすると、婚姻前の姓(=氏)に戻ることが出来ます。もっとも婚姻中の氏を続けることも選択出来ます。

民法第767条(離婚による復氏等)

婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

2 前項の規定によって婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

民法第751条(生存配偶者の復氏等)

夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。

2 略

このように婚姻中は、1つの姓(=氏)を名乗らなければならないのが現在の民法の規定となっているのです。結婚前までに名乗ってきた姓を使えなくなる点が、憲法違反ではないのか?と争われたのが今回の裁判です。

選択的夫婦別姓は20年前に法制化寸前だった

選択的夫婦別姓については20年前の平成7年に国の法制審議会(民法部会)というところで法制化する方向の答申が出され、民法改正案がつくられるところまで行きました。

婚姻制度等の見直し審議

ところが法案提出直前になって、与党自民党内の反対で法案が提出されないという事態になりました。

この時どこかの雑誌で「これで20年以上は日本での選択的夫婦別姓の実現はなくなってしまった」と弁護士か政治家のコメントを読みました。そんなに厳しい話なのかと思いましたが現実にそうなっており、今回の最高裁判決でまた遠のいた印象です。

わたしが結婚した20年前は、まさに「選択的夫婦別姓」が導入される雰囲気で、法制化されれば後1年以内に届け出たら新しい別姓夫婦の途も選べるといったことまで言われており、妻の姓で入籍したので、その後旧姓に戻そうと考えていました。

その後、平成22年にも改正案が準備されましたが国会に上程されていません。

選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について(法務省)

選択的夫婦別姓で何が解決するのか?

では、選択的夫婦別姓でなにが解決するのでしょうか?逆に言うとどちらかの氏に決めさせる「夫婦同氏」の何が問題なのかです。

「男女差別」なのか?

この点、男女差別であると強く指摘する方が多いです。今回のマスコミ報道でも女性の原告と女性だけで構成された弁護団によるアピールが印象に残りました。

しかし男女同権の思想は分かりますが論理的ではありません。なぜなら「民法は夫又は妻の氏を」と言っているだけで、必ず夫の氏にしなさいと言っているわけではないからです。

法律は「どちらを選んでもよい」と言っているので制度上は完全に平等です。ところが現実には約98%の夫婦が夫の氏を選択しています(民法Ⅳ 親族・相続 内田貴著)。

日本国憲法は「両性の合意のみに基づいて成立し」と、こう言ってます(第24条1項)。夫婦が合意したうえでその98%が夫の氏を選んでいるのだから、法律自体が男女差別を働いているとはスッキリとは言い難いのです。

このように言うと「事実上男女が差別されている現状を無視するものだ」との指摘を受けるわけですが、その現状は司法判断や立法措置のみで解決できることなのでしょうか?

事実上の男女差別ならば「選択的夫婦別姓」が法制化されても、相変わらず夫の氏を90%以上が選ぶという現状のままかも知れません。

そのことをハッキリさせるためにも違憲判決が出て立法化された方がよかったのではと思ったりもします。

個人の旧姓に対するアイデンティティか?

なので、わたしはむしろ個人の旧姓に対するアイデンティティを問題にする方が、むしろ女性にも男性にも公平な論点だと思います。しかし、これに対しては「氏名は個人の自由の領域ではなく、公的制度の問題である」とする立場もあります。

いずれにしても、家庭や職場といった日常の場面で個人が不自由を感じないと同時に、社会や国家といった共同体にも受け入れられるのは、制度をつくったから全て解決というわけにはいかないのです。

通称別姓はとっても煩雑です

わたしの12年間の通称別姓期間(妻の氏で入籍)を振り返っても、

  • 新生活のための銀行口座を戸籍名でないと受け付けてもらえなかった
  • 就職するときに「どっちが本当の名前なの?ふふっ」と冷笑された
  • 車のローンも戸籍名でしか組めなかった
  • 職場での税務や社会保険の手続はすべて戸籍名
  • もちろん風邪を引いたり歯を治すのも戸籍名

と、基本フォーマットは戸籍名です。通称なんて職場や友人という顔の見える範囲で使える程度で、なにか公式な手続や書類に残るものとなると使えません。

それでも20年前は緩かったと思います。最近の特に金融機関での「本人確認」はまことに厳格です。

常に、気持ちを緊張させて本人確認をもとめられる手続かどうか、通称でいけそうかどうかを心配して過ごさなければなりません。

現在の「代書屋」の仕事では、公的窓口で1日に何度も本人確認をうけます。窓口ごとに通称で通るか否かを考えていたらまったく仕事になりません。

この仕事にすすむことにした際に、籍を抜いて事実婚にしたのですが、ほぼ絶対的にそうせざるを得なかったと実感します。就職せずピンの仕事をしている方が通称別姓は厳しいのではないかとさえ思います。

だから現実的には事実婚にすすむしかない

今回の最高裁判決で選択的夫婦別姓の導入は何年延びたでしょうか?平成8年の時のように「20年以上」でしょうか。

職場で通称別姓を実践していて、その煩雑さといちいち窓口で怪訝に「ええっと、どっちが本当の名前ですか?」と聞かれる情けなさ。これを今後何年も続けその先の見通しもないのかと落胆しておられる方(現実は女性に多い)。

事実婚があります!

わたしが事実婚を選んだのも、すでに実践している方から直接聞いたことが大きいです。いわく「選択的夫婦別姓なんてもういらない!」のだと。最初はびっくりしました。

この方は給与以外所得について「配偶者控除」をうけるために、毎年入籍と除籍を繰り返していたという強者でした(笑)。それいいの?と思っていたら税務署と闘うことになっていましたけど。

あれくらい闘わないと旧姓のアイデンティティなんて維持できないのだと突きつけられました(笑)。

まとめ

現実に90%以上が夫の氏で入籍しているのは、法制度と司法の問題なのでしょうか。

わたしが妻の姓で入籍したときは友人知人から驚かれ心配されました。いわく、

「どうしたんか?婿養子に入ったのか?」と。

婿養子などと言う手続きを役所でした覚えがないので??でありました。

日本の世間一般の常識はそのあたりにありますし、どんな法制度が実現しても社会全般が古いものをひきづっているなかで個人のアイデンティティを主張しても、不自由さが消えることはありません。

入籍時に氏の選択が気になっていても「どっちにするか相談したい」と切り出せない女性側の問題、それを気づいているかいないのかスルーしている男性側の問題、夫の氏で入籍が90%以上は、そうでなくてはあり得ない数字でしょう。

だから最高裁「合憲」判決が出た今、旧姓アイデンティティを主張して前に進みたいならば「籍を外して事実婚にしたい」から始めるのはありなのです。

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